人の想いに生きること

 

 

 

もっと、もっと、
何が出来るだろうって
想いひろげていくこと

 

 

 

寄り添うって、何だと思いますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

音声を再生したい

 

 

 

 

看護師のわたしが
そう声をかけられたのは
もう随分前のこと

 

 

 

 

声を掛けてきたのは
面会から帰ろうとしていた
10歳にも満たない女の子のご両親

 

 

 

 

彼女はずっと
元気に過ごしていたけれど

 

 

 

ある日突然倒れて運ばれて
緊急で手術をしたけれど

 

 

 

人工呼吸器に繋がれたまま
一向に意識も戻らないまま
もって数日だろうという状態で

 

 

 

なんとも悲しい事実に
毎日逃げることなくご両親は
彼女に付き添い向き合っていました

 

 

 

声をかけられたその当時
基本的に機械の持ち込みは
禁止されていた集中治療室

 

 

 

私は当たり前のように
禁止事項であることを伝えると
遠慮がちに帰られましたが

 

 

 

再生したい内容は
通っていた小学校の先生に頼み込み
クラスメイトの声を撮ってきたもの

 

 

 

翌日そのことを知った先輩看護師が
工夫して音声を再生できるよう
様々な配慮をしてくれて

 

 

 

さらにその翌日には彼女の元で
音声を再生出来るようになりました

 

 

 

 

 

ー*ー*ー*ー*ー*ー

 

 

 

 

 

「頑張ってー!」
「また鬼ごっこしよなー!」

 

 

 

 

モニター音だけが響く
無機質な病室の中で
テープから流れてきた音は

 

 

 

きゃあきゃあと
賑やかで無邪気な声。

 

 

 

可愛くて、明るくて、
一点の曇りもない声たちに

 

 

 

改めてこの物言わぬこの子は、
テープの声たちと同じような
全く影のない明るい
可愛い声をしていたのだろうなと

 

 

 

そう思ったときに
なんとも堪らない感覚になりました

 

 

 

ご両親はとてもとても
聞いていられないようでしたが

 

 

 

また明日も別のを持って来ます。
先生が用意してくださってるので。

 

 

 

そう言って帰っていかれました

 

 

 

けれどその少し後から
彼女は少しずつ脈が下がっていき

 

 

 

再び駆けつけたご両親に見守られ
そのまま早過ぎる旅立ちとなり

 

 

 

もう一つの音声は
再生出来ないままでした

 

 

 

 

 

 

 

 

あと一日、早ければ。

 

 

 

それはすなわち
私の対応の違い

 

 

 

担当ではなかった新人の私は
当時は担当の患者さんのことを
考えるのが精一杯で

 

 

他の患者さんは全く頭に入らず
気に止める余裕もありませんでした

 

 

 

でもあの日きちんと手を止め
事情を聞き相談して動いていれば

 

 

 

彼女の生きている内に
もう一つの音声が
流れていたのかもしれません

 

 

 

 

たとえ再生できたとしても
何かあった訳ではないのです

 

 

 

彼女は明らかにもっと早く
亡くなってもおかしくなかったし
奇跡が起こることはなかったでしょう

 

 

 

それくらい厳しかったし
ご両親も責めることは
ひとつもありませんでした

 

 

 

そして私が担当する患者さんもまた
とても厳しい状態の方でした

 

 

 

でも、やっぱり。

 

 

 

わたしはとても、
とても後悔しました

 

 

 

小さな手の少女が
教えてくれたことは

 

 

 

私の力の無さと
人に寄り添う本当の意味。

 

 

 

 

ー*ー*ー*ー*ー*ー

 

 

 

 

人生には
どうにもならないことって
たくさんあるもの

 

 

 

彼女がそもそも
倒れたことだってそうで
彼女もご両親も何にも悪くない

 

 

 

突然人生の終わりを
迎えてしまった人々に

 

 

 

やるせない悲しみに
私が出来ることは
現実を目の当たりにして
追われることではない

 

 

 

そこでなにをするのか
出来ることは何なのか

 

 

 

私は本人でも家族でもない
看護師であることを忘れず

 

 

 

もっと、
もっと、
もっと。

 

 

 

今この場にいる私には
何が出来るんだろうと思わなければ

 

 

 

自分を活かし相手の想いに
生きるくらいでなければ

 

 

 

そう思いました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人はひとりでは
生きてはゆけません

 

 

 

大体は誰かと共に過ごしてる

 

 

 

それはきっと
自分の想いだけでも
相手の想いだけでも
関係は成り立たなくて

 

 

 

 

もっと、もっと。

 

 

 

 

何が出来るだろうと
想い広げていくこと

 

 

少しずつでもいいから
自分自身にも力を付け
そう相手を想いやること

 

 

 

それが寄り添う意味だと思う
今日この頃です

 

 

 

 

あなたにとって寄り添うこと
寄り添って生きるということ

 

 

 

それはどんな意味でしょう

 

 

 

 

少し考えてみると
また一つ違う世界が
見え始めるかもしれませんね

 

 

 

 

では